SAUDI FIELD GUIDE / 相続・資産承継

サウジアラビアの相続・資産承継ガイド

サウジアラビアに預金、不動産、会社の持分を残して相続が発生した場合、どのような手続が必要になるか。事前に準備しておくべきことはあるか。本人と相続人の国籍・宗教・居住地、資産の所在地などを踏まえ、日本との違いと生前にできる準備を解説します。

ジェッダ歴史地区の外観。木製の張り出し窓(ラワーシーン)が並ぶ。
ジェッダ歴史地区の外観。木製の張り出し窓(ラワーシーン)が並ぶ。abdullah alallah / 写真出典 / Pexels License

サウジに預金、不動産、会社の持分を持つ方にとって、相続は取得時から考えておきたい問題です。日本で手続きを終えても、サウジの銀行・登記・会社で必要な手続きが自動的に終わるわけではありません。

サウジ家族法には、宗教の異なる者の間の相続、配偶者・子・親の取り分、原則3分の1という遺言の限度など、日本と大きく異なる規定があります。ただし、日本人の相続にどの法を適用し、現地でどう扱うかは、国籍・宗教・居住地・資産を踏まえた別の検討です。

制度の違いと、相続人証明や資産ごとの名義変更を分けて知っておくことが、家族が困らないための準備になります。

  1. 本人と家族を確認
  2. 証書・遺言を確認
  3. 遺産と債務を整理
  4. 資産ごとに承継

01 / OVERVIEW

相続・資産承継を図で見る

  1. 本人と家族を確認

    日本とサウジでは、相続人の範囲と取り分の考え方が違います。サウジ家族法が適用される場合、子がいても親が相続人になることがあり、配偶者の取り分も日本と同じではありません。

    さらに同法は、宗教を異にする者の間の相続を認めない規定を置いています。日本国籍かどうかという話と、ムスリムかどうかという話は区別する必要があります。

    日本人の相続にどの法律を適用し、現地でどう扱われるかは、本人・相続人の国籍、宗教、居住地と資産を踏まえて検討します。サウジに資産があるだけで、すべて同じ相続分になるとは断定できません。

  2. 証書・遺言を確認

    サウジ家族法の遺言には、原則として遺産の3分の1までという限度があります。それを超える部分は相続人の承認が問題になり、相続人への遺贈にも、死亡後の他の相続人の承認に関する規定があります。遺言を作れば希望どおりに全財産を移せるとは限りません。

    相続開始後には、死亡の証明と、相続人・相続分を示す現地の相続人証明が重要です。法務省のMerath関連サービスでは相続人証明の手続きを案内しています。

    日本の戸籍や遺言書を持っているだけで、サウジの銀行から直ちに払戻しを受けられるわけではありません。翻訳・認証、現地の代理人、相続人証明の取得を含めて準備します。

  3. 遺産と債務を整理

    サウジ家族法では、遺産から葬儀費用、債務、有効な遺贈を処理したうえで、残りを相続人に分配する順序が定められています。銀行残高と不動産価格を足した額が、そのまま分配額になるわけではありません。

    事業を行っていた方なら、会社の借入れ、本人の保証、未払代金と、会社が持つ資産を区別します。会社名義の不動産は、本人が直接持つ不動産と同じ扱いではありません。

    資産と負債の資料を集めたうえで、遺言の有効性と分配方法を検討します。税務上の申告や負担も、相続分の計算とは別に調べる必要があります。

  4. 資産ごとに承継

    預金は銀行、不動産は登記、会社持分は会社・商業登記というように、相続人が決まった後も資産ごとの手続きがあります。未成年の相続人がいる場合や、日本在住の相続人だけで手続きを進める場合は、代理権と必要書類の準備も重要です。

    不動産では、相続する権利と、外国人として名義を取得するための条件を区別します。会社持分では、定款や株主間契約、事業継続、他の出資者との関係も調べます。

    相続人間で話合いができても、日本の遺産分割協議書を作れば現地の手続きまで終わるわけではありません。サウジ側で必要な証明・承認と、金融機関等が受け付ける形を合わせます。

ジェッダ歴史地区の伝統家屋の内部。木彫りの意匠と座卓のしつらえ。
ジェッダ歴史地区の伝統家屋の内部。木彫りの意匠と座卓のしつらえ。Anne and David / 写真出典 / Public domain
リヤドの街路に面した中層の建物。下層に店舗、上層に住戸が入る。
リヤドの街路に面した中層の建物。下層に店舗、上層に住戸が入る。Muhannad al zabidi / 写真出典 / Pexels License

02 / COMPARE

日本とサウジで、相続はどう違うか

論点日本法が適用される一般的な場合サウジ家族法が適用される場合
配偶者と子配偶者2分の1、子全体で2分の1が基本妻と相続資格のある子がいる場合、妻は8分の1。夫が相続する場合は4分の1
親の相続子がいれば親は法定相続人にならない子とともに親が相続する場合がある
息子と娘同順位の子は原則均等息子と娘が残余を分ける場面では2対1。「女性は常に男性の半分」ではない
遺言遺言による指定と遺留分などを検討原則3分の1の限度と、相続人への遺贈の制限などを検討
宗教宗教の違い自体で相続資格を失わない宗教の異なる者の間の相続を認めない規定がある

これは制度の比較です。実際の適用法・相続分は、家族構成と相続資格、遺言等を踏まえて判断します。

03 / CHECKLIST

家族が困らないために、生前にそろえておくもの

  • 日本とサウジの資産・負債、名義、銀行・会社の窓口を一覧にする
  • 不動産の登記、会社持分・定款、借入れ・保証に関する資料を残す
  • 本人と相続人の国籍・宗教・居住地、婚姻・親子関係の資料をそろえる
  • 遺言の保管先だけでなく、現地での有効性と実行方法を生前に検討する
  • 日本の家族が現地の電子手続きを直接利用できない場合に備え、代理人と委任状の準備方法を調べる
  • 一人で経営・承認を担っている会社では、死亡後に誰が日常業務を続けるかも決めておく
  • 個別の適用法と現地手続きは、国際相続を扱う専門家に確認してください。

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参考資料・公式窓口

制度の最新情報や申請条件は、以下の公式窓口で調べられます。参照日:2026年9月26日。

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