サウジアラビアの不動産市場。人口・供給・物件収支の見方

物件の価格と想定利回りだけでなく、地域の人口、供給予定、取得条件を確認します。統計と物件資料を比較するときの注意点をまとめました。

夜のリヤド。彫りの深いファサードの集合住宅と、周囲の高層ビル群。
夜のリヤド。彫りの深いファサードの集合住宅と、周囲の高層ビル群。写真:提供資料。
目次

人口増加、企業の進出、都市開発は不動産需要の背景になります。ただし、売買価格が上がることと、賃料収入が増えることは同じではありません。

リヤドには5年間の賃料引上げ凍結があり、保有期間中に毎年賃上げできる収支計画は使えません。

投資判断では、外国人の取得資格、実際の成約賃料、新規供給、取得・運営・売却費用を物件ごとに比べます。

誰が住み、どこへ通勤するか

住宅は、人口の増加に加えて、どの地区に、どの所得層の世帯が住むかで需要が変わります。単身の駐在員、家族帯同の外国人、サウジ人の世帯では、求める広さ、家具、駐車場、学校へのアクセスが違います。

オフィスは勤務先や行政機関への近さ、倉庫は港・高速道路・配送先への接続が重要です。「サウジ全体で需要が伸びる」という話から、借りる人と使い方を具体化します。

賃料の比較には、REGAの不動産指標で公開されているEjarの成約情報も使えます。募集広告の価格と成約賃料を混同せず、地区、用途、面積、契約時期をそろえて調べます。

サウジアラビアの人口推移

国民・非サウジアラビア人を含む総人口。2023年・2024年は推計値です。全国の人口増加だけで特定地域の住宅需要を判断することはできません。

2022年
32,175,224人
2023年(推計)
33,702,731人
2024年(推計)
35,300,280人

出典:GASTAT「Livability in Saudi Cities 2025, p.7」。参照:2026-09-24。統計は改訂されることがあります。

周辺に、いつ新しい物件ができるか

大型開発の発表件数を、そのまま入居可能な物件数として数えることはできません。計画、着工、建物完成、引渡し、実際の入居を分けて見ます。

投資する地区で同じ時期に似た物件が大量に引き渡されると、入居者の獲得競争が強まる可能性があります。周辺の道路、学校、商業施設がいつ使えるようになるかも、賃貸開始の時期に影響します。

建設中の物件を購入する場合は、プロジェクトの販売許可とエスクロー口座、工程に連動した支払条件、完成が遅れた場合の扱いを調べます。

リヤドの街路に面した中層の建物。下層に店舗、上層に住戸が入る。
リヤドの街路に面した中層の建物。下層に店舗、上層に住戸が入る。Muhannad al zabidi / 写真出典 / Pexels License

自分が買える物件か

外国人が買えるかは、買主の区分と物件の指定区域・権利の条件で決まります。購入できる物件でも、短期宿泊、店舗、事務所など希望する用途で運営できるとは限りません。

さらにリヤド市の対象区域では、2025年9月25日から5年間、住宅・商業物件の年額賃料の引上げが凍結されています。過去の値上がり率を将来の賃料にそのまま当てはめず、Ejarの賃貸履歴と現行条件を使います。

新しく貸し出す物件も、過去に賃貸されたかどうかで基準が異なります。現在空室だから自由に賃料を付け直せる、とは限りません。

Figure 04

サウジアラビアの主要都市・地域

リヤドは内陸、ジェッダは紅海沿岸、ダンマームは東部州に位置します。地図は位置関係を示す略図です。

紅海アラビア湾(ペルシャ湾)リヤドジェッダダンマームマッカマディーナアル・ウラーアブハータブークアル・アハサー
  • リヤド
    首都・政策と大企業の中心
  • ジェッダ
    紅海の商都
  • ダンマーム
    東部州・産業の集積
数値を表で見る
都市・地域性格
リヤド首都。行政、規制当局、大企業の本社機能が集まる
ジェッダ紅海に面した商都。流通、消費財、小売、巡礼の人の流れ
ダンマーム(東部州)エネルギー産業と重工業の集積。日本企業との取引が長い
メッカ/マディーナ宗教都市。不動産の所有規制が他都市と異なる
アル・ウラー観光開発の中心。ヘグラ遺跡
アブハー南部アシール地方。山岳と冷涼な気候

2026年8月時点の取得 / OpenStreetMap contributors「国境データ(ODbL)」 出典(参照 2026-08-10)

広告の利回りから、実際の収支へ

利回りは、同じ「6%」でも何を分母・分子に入れたかで意味が変わります。

説明用の例として、物件価格100万SAR、年間賃料6万SAR、年間経費1万SAR、取得費用合計7万SARと仮定します。取得費用7万SARは計算のための仮定で、法定の一律料率ではありません。

表面利回り:6万 ÷ 100万 = 6.0%

物件価格に対する経費控除後利回り:(6万 − 1万)÷ 100万 = 5.0%

取得費用を含む投資額に対する利回り:(6万 − 1万)÷ 107万 ≈ 4.67%

さらに2か月空室で賃料が5万SARに下がり、経費が同額なら、4万 ÷ 107万 ≈ 3.74%です。

これは相場や期待収益ではなく、計算方法の例です。融資費用、所得に対する税、売却費用、円との為替変動も含めると、日本円での最終的な収益はさらに変わります。

オフィスを見るときの追加論点

リヤドのオフィス需要には、政府機関・大企業の集積やRHQの設置が関わります。ただし、RHQを設立する企業が増えることから、すべてのオフィスの収益性が高いとは言えません。

入居企業が求める面積、駐車場、セキュリティー、設備、内装状態と、その地区の供給を照合します。賃料収入だけでなく、テナント入替え時の工事や賃料免除期間も収支に含めます。

リヤドの賃料引上げ凍結は商業物件にも適用されます。入居時の賃料と契約期間、更新条件が、投資期間中の収益を左右します。

比較するときに気をつけたいこと

単年度の価格変動から傾向を語る。 不動産価格は取引件数が少ない期間に大きく振れます。

近隣国の事例をそのまま当てはめる。 人口規模、国内需要の厚み、制度の設計が異なります。

利回りの保証を前提に計画を組む。 賃料も稼働率も変動します。保証契約が提示された場合も、保証主体の支払能力、期間、免責条件を確認し、契約があることを無リスクと解釈しないでください。

参照日を記録しない。 制度も統計も更新されます。判断に使った数字がいつのものかを残しておかないと、後で検証ができません。

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Sources & Notes

本記事は、記載した参照日時点で公開されていた情報にもとづく一般的な情報提供です。 制度、統計、事業環境は変わります。法務・税務・投資に関する判断にあたっては、 必ず有資格の専門家にご確認ください。

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