サウジのVision 2030とは。国家計画と日本企業の事業機会

サウジアラビアの壮大な国家戦略サウジビジョン2030。一部計画の変更はありながら着実に国は大きく進化してきています。しかし、この計画にど真ん中で関わる日系企業はわずかです。国家計画とそこから派生する各都市への施策を分析して、日本企業の事業機会を紐解きます。

リヤドの新しい高層建築。
リヤドの新しい高層建築。Steven Jeffery / 写真出典 / Pexels License
目次

国家戦略のどこに、自社の仕事があるか

サウジビジョン2030は、経済の多角化や暮らしの変化を進める壮大な国家戦略です。一部の計画や工程が見直されても、住宅、観光、産業、人材など、事業を考えるうえで追うべき分野は幅広くあります。

日本企業にとって重要なのは、計画の規模を知るだけでなく、そこからどんな仕事が生まれ、誰が発注するかを調べることです。大規模開発に直接参加する仕事もあれば、施設の設備、運営、保守、販売、イベントなど、関連する需要もあります。

自社の技術や商品が必要とされる場所を、国家計画、実行プログラム、都市の事業、発注企業の順にたどります。

国家計画から、都市と発注企業までたどる

Vision 2030には「活気ある社会」「発展する経済」「野心的な国家」という3つの柱があり、その下に住宅、産業、観光、金融、人材、公共投資などの実行プログラムがあります。

事業を探すときは、自社に近い分野を選び、担当機関と関連する都市・プロジェクトを調べます。例えば観光なら、ホテルを建てる仕事だけでなく、設備、内装、予約、交通、運営、人材育成まで、どの会社が何を必要とするかを考えられます。

次に、発注者と調達窓口、参加条件、時期を確かめます。構想段階なのか、発注準備中なのか、すでに運営が始まっているのかで、日本側が提案できる内容も変わります。

経済の数字は、どこまで動いたか

GASTAT によれば、2025年の実質GDP成長率は4.5%でした。石油活動は+5.7%、非石油活動は+4.9%、政府活動は+0.9%。名目GDPは4兆7,890億サウジアラビア・リヤルです。各部門の成長率は、その部門の前年比であり、全体への寄与度とは異なります。

これらは国全体を捉える統計です。特定の都市、商品、企業の売上が同じ割合で伸びることを示すものではありません。

この数字の読み方には注意が必要です。「脱石油が進んだ」と要約するのは早すぎます。単年度の成長率は石油生産量の政策的な調整に強く影響されるため、非石油部門の寄与が大きく見える年と、そうでない年が出ます。方向としての多角化は進んでいますが、一年の数字で構造転換の達成度を測ることはできません。

2025年の実質GDP成長率

2024年比。経済全体と各部門の伸び率を比較しています。合計する指標ではなく、成長への寄与度とも異なります。

経済全体
+4.5%
石油活動
+5.7%
非石油活動
+4.9%
政府活動
+0.9%

出典:GASTAT「Saudi economy records 4.5% growth in 2025」。参照:2026-09-24。統計は改訂されることがあります。

PIFという資金の動き

PIF(公共投資基金)は、サウジの産業育成や大規模開発を担う主要な投資家です。2025年の年次報告では、運用資産は9,000億米ドル超とされています。ただし、この金額がそのまま新規発注の予算ではありません。

案件を探す際は、PIF本体、投資先企業、プロジェクト会社、元請業者を分けます。同じグループに見えても、契約相手、調達窓口、支払義務を負う会社は異なります。

御社が狙うのが設計、設備、運営、販促のどの業務かによって提案先も変わります。発表資料の大きな金額より、発注予定の範囲と、調達の時期・参加条件が重要です。

Expo 2030と2034年ワールドカップ

2030年リヤド万博や2034年FIFAワールドカップに向けた準備は、建設だけでなく、交通、宿泊、運営、警備、飲食、コンテンツなどに関わります。

日本企業には、大阪・関西万博などの経験を提案に生かす接点があります。2025年9月の日・サウジ閣僚会合でも、両国の万博協力が議題になりました。

ただし、大会や万博の開催が決まっていることと、特定の仕事の発注・予算が決まっていることは別です。募集主体、業務範囲、発注時期、必要実績を調べ、自社が元請で入るのか、専門業務で参加するのかを考えます。

夕景のリヤド。中央にキングダム・センター、奥に高層ビル群。
夕景のリヤド。中央にキングダム・センター、奥に高層ビル群。B.alotaby / 写真出典 / CC BY-SA 4.0

計画変更も含めて、事業の機会を見直す

大規模開発は、当初発表の構想から、優先順位や工程が変わることがあります。計画図にある建物や施設を、予定どおり完成する既存の市場として扱わないようにします。

参画を検討するなら、自社が関わる部分の予算承認、発注主体、設計・施工・運営の工程、契約相手の支払条件を調べます。プロジェクト全体が進んでいても、自社の仕事が発注される時期とは一致しない場合があります。

現地企業との面談では「この計画は進んでいますか」だけでなく、誰が何を発注し、こちらにいつまでに何を求めているのかを聞きます。

Sources & Notes

本記事は、記載した参照日時点で公開されていた情報にもとづく一般的な情報提供です。 制度、統計、事業環境は変わります。法務・税務・投資に関する判断にあたっては、 必ず有資格の専門家にご確認ください。

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